雪之原

 今年は暖かいと聞いていたのに。
 あれは何の話だったのかと疑いたくなる。
 来てみればいつもと同じ、広大な景色。
 真白の風景は深々と広がり続けて、どれだけ歩いたって果てなんて来ない。
 戻ることだってもうできない。
 唯々真直ぐ歩いてきたはずだったのに、振り返った視界は一片の明かりさえ拾えなくなっていた。
 深く静かな闇の世界。
 厳冬の空気は流れることを止め、何もかもを白く張り詰めさせる。

 このまま、ここで足を止めたら?
 痛いくらいの寒さも、濡れた足の痺れも。
 もしかすれば感じないのかな。

 雪の感触は柔らかくて、冷たくて。
 視界を塗りこめる気取った純白に、逆らってみたい誘惑に駆られた。







End

20070412

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