お互いを罵ることで、自分が一番傷つけば良かった。
 優しくしたいと願っているのに。
 温かく包みこんでやりたいと願いながら、痛感させられる非力さが悔しくて。
 認められないから----
 目の前の人を罵る。

 初夏の雨はまだ冷たく、立ち尽くす身体から容赦なく体力を奪っていく。
 地を濡らし、街を濡らす雨音だけの夜更けの路地。睨み合いが馬鹿らしく思えてきた。
 揃って目を逸らし、座り込む。
「……腹減ったな」
 身体を打つ雨の強さに泣き言が漏れる。

 どうしてこんな事になってしまったんだろう。
 全てが上手くいくと思っていたのに……







End

20070412

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