空き缶

 ドアノブに触れたのは偶然だった。
 その玄関先で鳴らしてみた携帯電話は留守電のまま、腹立ち紛れに蹴り飛ばすついでとは言わないでおこう。
 でなければ、予想外にも軽く回ったノブを押し、半開きのリビングの扉に溜息を漏らす必要もなかった。
 勝手に上がるぞと、とりあえず声をかけて入った部屋のカーテンは閉ざされたまま。いつもならきっと、ちゃんと朝日が入っているだろうに。
 出迎えがコレでは、しょうがない。
 床に転がるビールの空缶が、ひとつ、ふたつ……合計で5本。
 足元まで転がされている空缶を拾い上げ、今度は肺の奥から息を吐いた。
 いびつに握り潰された理由がすっぽかしの原因では、叩き起こすのも気が引けた。







End

20070412

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