転がり込む

 時計ひとつ、ごく普通の装飾さえも見当たらなかった清潔な白壁。単体のテレビは小さな冷蔵庫と並べてフローリングに直置きされていた。

 ほとんど使ってないから と前置きされて案内された空間の虚。
 見渡すぐるりに不安になった。

 住いである場所の、想像外の光景。
 それは唯、広いだけの部屋。
 必要最低限とさえ言えなくて。

「……本当に住んでんの?」

 思わずそう訊いてしまった夕間暮れ。
 何の気もなく、ああ、と返った言葉は殺風景な部屋にとてもよく溶け込んだ。







20070508

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