「ごめんなさい」
舗装状態の良くない道。
うるさく揺れる路線バス。
緑の木々が遠くまで望める車外の風景。
懐かしい、と。ふっと思い出し、私は口の端を歪めていた。
ほんの数時間前までは凄まじい喧騒の中で寝て起きて、毎日を何食わぬ顔で過ごしていたはずなのに。過去を優しく思う暇を惜しむよう、ただ足早に。
そのせいだろう。
良い機会だと言われた。
昨夜。
自分でも、どうしようもない激憤に駆られた心は、あの街で最初に手を差し伸べてくれた人に、何を求めたのだろう。
労わり、慰め、励まし、哀れみ。
そのどれでもあったようで、そのどれをも拒絶した。
でもひとつだけ確かな事は、今こうして一人で街を離れた事実と、冷めぬ気持ち。
まとめられない言葉を根気強く聞いてくれる相手に、本当に何のつもりでより以上の弱さを露呈しようとしていたのか。
自分でも呆れ果てた行動だった。
何から、何まで。
溢れさせた言葉を、思いを、取り返す方法があるなんて、これっぽっちも信じていないのに。
バスは相変わらずの路を走り、慣れた表情をひとつ、またひとつ、目的の場所に置いていく。
窓の外はもうずっと緑が続き、私はただ振動の酷さに顔をしかめていた。
End
うるさく揺れる路線バス。
緑の木々が遠くまで望める車外の風景。
懐かしい、と。ふっと思い出し、私は口の端を歪めていた。
ほんの数時間前までは凄まじい喧騒の中で寝て起きて、毎日を何食わぬ顔で過ごしていたはずなのに。過去を優しく思う暇を惜しむよう、ただ足早に。
そのせいだろう。
良い機会だと言われた。
昨夜。
自分でも、どうしようもない激憤に駆られた心は、あの街で最初に手を差し伸べてくれた人に、何を求めたのだろう。
労わり、慰め、励まし、哀れみ。
そのどれでもあったようで、そのどれをも拒絶した。
でもひとつだけ確かな事は、今こうして一人で街を離れた事実と、冷めぬ気持ち。
まとめられない言葉を根気強く聞いてくれる相手に、本当に何のつもりでより以上の弱さを露呈しようとしていたのか。
自分でも呆れ果てた行動だった。
何から、何まで。
溢れさせた言葉を、思いを、取り返す方法があるなんて、これっぽっちも信じていないのに。
バスは相変わらずの路を走り、慣れた表情をひとつ、またひとつ、目的の場所に置いていく。
窓の外はもうずっと緑が続き、私はただ振動の酷さに顔をしかめていた。
End
20070412